Cases 症例紹介

猫のリンパ腫

目次

猫のリンパ腫とは

猫のリンパ腫は、リンパ球という免疫に関わる細胞が腫瘍化する疾患で、猫で最も多い腫瘍の一つです。

発生部位によって症状や予後、治療方針が大きく異なるのが特徴です。

消化管(胃や腸)に発生するタイプが最も一般的で、診断技術の進歩により炎症性腸疾患(IBD)との鑑別が重要な小細胞性リンパ腫が多く見つかるようになっています。


猫のリンパ腫の分類と主な症状

リンパ腫は体のさまざまな場所に発生します。



消化器型リンパ腫(猫で一番多い型)

発生部位:胃・小腸・大腸・腸間膜リンパ節

好発年齢:中高齢(10歳以上に多い)

よくある症状としては

  • 慢性的な下痢・嘔吐
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 元気消失腹部腫知すること

比較的ゆっくり進行する「小細胞性」と、急速に悪化する「大細胞性」があります。



縦隔型リンパ腫

発生部位:胸腔内(前縦隔)

好発年齢:若齢〜中齢(FeLV関連が多い)

よくある症状

  • 呼吸困難
  • 開口呼吸
  • 胸水貯留
  • 元気消失
  • 食欲低下

急性発症し、救急対応が必要になることがあります。



多中心型リンパ腫

発生部位:全身のリンパ節

よくある症状

  • 体表リンパ節の腫大
  • 元気消失
  • 発熱
  • 体重減少



鼻腔型リンパ腫

発生部位:鼻腔

よくある症状

  • 片側性鼻汁(血様鼻汁)
  • くしゃみ
  • 鼻づまり
  • 顔面変形(進行例)

慢性鼻炎と誤認されることがあります。



腎臓型リンパ腫

発生部位:両側腎臓が多い

よくある症状

  • 多飲多尿
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 腎数値上昇

急速に腎機能が悪化するケースもあります。

中でも①消化器型リンパ腫は、

「食欲不振」「体重減少」「嘔吐・下痢」など、慢性的かつ一見よくある症状として現れることが多く見逃されることが多いのが特徴です。

今回は猫のリンパ腫で最も発生率の高い消化器型リンパ腫について解説します。


消化器型リンパ腫のタイプ

猫のリンパ腫は、細胞の大きさや性質によってさらに分類され、それによって治療法や予後が大きく異なります。

小細胞性リンパ腫

  • 進行がゆっくり
  • 内服薬(ステロイド+抗がん剤)でコントロール可能なことが多い
  • 長期管理が期待できるタイプ

大細胞性リンパ腫

  • 進行が早い
  • 注射を含む多剤併用化学療法が必要
  • 早期治療が重要

※この分類は病理検査やクローナリティ検査によって判断します。


診断方法

症状や超音波検査だけで確定診断はで気ないため、当院では以下の検査を組み合わせて診断を行います。

  • 血液検査         低アルブミン血症、貧血、炎症項目の上昇
  • 腹部レントゲン検査    腹部臓器の他疾患の除外
  • 腹部超音波検査      腸壁(筋層)の肥厚、層構造の乱れ、腸間膜リンパ節の腫大
  • 細胞診・内視鏡検査     リンパ節、胃・腸の細胞・組織生検
  • 病理組織検査       細胞の形態・構造からグレード(悪性度)を評価
  • クローナリティ検査    腫瘍か炎症かの裏付け

治療について

リンパ腫の治療は「治す」よりも、できるだけ長く、苦痛を少なく生活してもらうことを目標に行います。

小細胞性リンパ腫

  • ステロイド
  • クロラムブシル(内服抗がん剤)

多くの猫ちゃんで自宅での内服治療が可能で、

生活の質(QOL)を保ちながら治療を続けられます。

大細胞性リンパ腫

  • 多剤併用化学療法

状態や性格、ご家族のご希望を踏まえ、無理のない治療計画をご提案します。


予後(生存期間)

リンパ腫のタイプや治療反応により大きく異なります。

  • 小細胞性リンパ腫  → 平均生存期間:1.5〜3年以上
  • 大細胞性リンパ腫  → 数ヶ月〜1年程度(治療内容による)

基礎疾患がない場合は、より長期の治療反応が期待できます。


当院での考え方

当院では、

  • 内視鏡やCT検査などの高度医療に基づいた正確な診断
  • 科学的根拠に基づいた治療
  • ペットとご家族の生活を最優先にした選択

を大切にしています。

「高齢だから」「治療が大変そうだから」とすぐに諦める必要はありません。

その子に合った治療の選択肢を一緒に考えていきましょう。

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